2023/5/31
区分所有法改正で弁護士団体の意見書
マンション管理問題に取り組む弁護士らで組織する全国マンション問題研究会(山上知裕代表理事)は令和5年4月11日付で法務省民事局宛に「区分所有法制の改正に関する意見書」を提出した。意見書の概要は次のとおり。

@管理費等債権の優先化
(意見の趣旨)
管理費等債権を担保する先取特権の順位について定めた区分所有法7条2項を改正するなどして、管理組合が有する管理費等債権の実態法上の優先順位を登記された抵当権者に優先させるべきである。

A管理費等債権放棄の明確化
(意見の趣旨)
管理組合が管理費等を放棄することができること、およびその手続きについて立法化すべきである。

B管理組合法人の理事等資格の明記※
(意見の趣旨)
管理組合法人の理事に法人がなれるとの解釈を法文上明らかにすべきである。
その方法として、現在、管理組合法人の理事の資格が定められていないことから、一般社団法人に準じて理事の資格を規定すべきである。
また、持分会社の規定に準じ、法人が理事となる場合には、当該法人は理事の職務を行うべき者を選任し、法人が理事となる場合には、当該法人は理事の職務を行うべき者を選任し、その者の氏名及び住所を他の理事らに通知する旨を定めるべきである(会社法598条1項)。監事についても理事等と兼任できない他は、区分所有法に資格要件が定められておらず、同様に考えても差し支えないものと思われる。
なお、非法人の管理組合においては、区分所有法上、管理者方式を採用しているが、多くの管理組合において理事会方式を採用しているのであり、同様に、法人が理事等になることが許されると解釈すべきである(この点については、法改正は必要ではなく、管理組合法人の改正が当然に解釈に影響を及ぼすものと考えられる)。

C区分所有者以外の者が管理者となる場合の監督制度について
(意見の趣旨)
区分所有者以外の者が管理者となる場合、当該管理者の利益相反行為等を監督するための制度を検討すべきである。

D管理組合による専有部分の取得について
(意見の趣旨)
研究会報告書では、「法人格なき社団である区分所有者の団体(管理組合)または管理組合法人(以下「管理組合等」という。)が区分所有権を取得することの可否に関する規律を設けることについて、管理組合等の目的との関係を踏まえつつ、引き続き検討すべきである。」とされているところ、本改正に関しては、
・管理組合等がその目的の範囲内で区分所有権を取得し得ることを明確化する立法を行うとともに、
・管理組合等が区分所有権を取得する場合の手続きについて立法化すべきである。

E区分所有者の「適正管理義務」を規定すべきこと
(意見の趣旨)
区分所有者が相互に適正管理を行うべき「責務」ではなく、法的義務として適正に管理すべき「義務」を規定すべきである。

※は、法制審議会区分所有法制部会や区分所有法制研究会研究報告書で取り上げていない事項

各管理組合等にあっては、参考にされたい。
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